「損失や利益の額は、単にポジションの大きさの問題なのです」
トム・バッソという元トレーダーをご存じでしょうか。
彼は株式や先物の世界で長く成功を収めた人物であり、
その投資哲学の中でもっとも有名なのがこの言葉です。
「損失や利益の額は、単にポジションの大きさの問題なのです。」
これは一見シンプルな言葉ですが、
多くの投資家がこの“単純な真実”を忘れてしまうことがあります。
■ ロットを変えただけで別の世界になる
たとえば、同じ相場で同じタイミングにエントリーしても、
ロット数が違うだけで感じ方がまったく変わります。
- 0.1ロットで取引している人は、値動きが気にならず落ち着いてチャートを見られる。
- 5ロットで取引している人は、1pips動くだけで心拍数が上がる。
つまり、損失額や利益額の大きさよりも、
「そのロットが自分のメンタルに合っているかどうか」が
長期的な成功を左右するのです。
■ 感情に振り回されると冷静な判断ができない
ロットを大きくしすぎると、
利益が出ているときは「もっと伸ばせるかも」と欲が出て、
含み損になると「早く戻ってくれ」と祈るような気持ちになります。
このように感情がチャートを動かす錯覚に陥ると、
冷静な判断ができず、
利確・損切りのタイミングを見失ってしまいます。
その結果、
- 損切りを遅らせて被害が拡大する
- 小さな利益で満足してしまう
といった「典型的な負けパターン」に陥るのです。
■ 具体例で見る:ポジションサイズの怖さ
仮に資金100万円を持っていて、
ドル円をレバレッジ25倍で取引するとします。
- 1ロット(10万通貨)の取引 → 1円動けば10万円の損益
- 0.1ロット(1万通貨)の取引 → 1円動けば1万円の損益
たった1円の値動きで資金の1割が変動するか、1%が変動するか。
この差が、取引中のメンタルに大きく影響します。
1ロットで入っていた場合、
ちょっとした含み損で「どうしよう」と不安になり、
損切りやナンピンを繰り返してしまう可能性もあります。
逆に0.1ロットであれば、
「一時的な値動きだ」と冷静に構えていられます。
最適なポジションサイズとは、感情を乱さない範囲のロットなのです。
■ トム・バッソが伝えたかった本質
トム・バッソは著書『トレードで成功するための「聖杯」はポジションサイズ』の中で、
「相場の未来を当てる力よりも、資金管理とメンタルコントロールこそが成功の鍵」だと述べています。
つまり、トレーダーの真の勝敗は“予想の精度”ではなく、
“ポジションサイズをどう扱うか”で決まるということです。
損失に耐えられずにロットを落としたり、
一度勝った勢いでロットを上げすぎたりするのは、
すべて「感情に支配されたポジションサイズ調整」です。
成功する投資家は、一貫したサイズで取引を続けられる人。
それが長期で勝ち続けるための基本なのです。
■ まとめ:ポジションは「欲」ではなく「冷静さ」で決める
FXで勝ちたいと思うほど、ロットを上げたくなる。
しかし、そこで崩れるのが多くのトレーダーの共通点です。
トム・バッソの名言は、それを戒めています。
損失も利益も、結局はポジションサイズで決まる。
資金に対して適切なロットを保つこと。
それがメンタルを守り、結果的に資金を守る最もシンプルで確実な方法です。
焦らず、自分に合ったロットで続ける。
この一見地味な習慣こそが、
最終的にトレードの世界で生き残るための「聖杯」なのです。