頭と尻尾はくれてやれ──本間宗久に学ぶ「欲を抑える」投資術
江戸時代の伝説的な米相場師・本間宗久(ほんまそうきゅう)が残した格言に、
「頭と尻尾はくれてやれ」というものがあります。
この言葉には、今もなお通用する投資の真理が込められています。
FXでも株式でも、そして仮想通貨でも、欲を出しすぎた瞬間に市場から退場する人が後を絶ちません。
今回はこの格言の意味と、FXでの具体例を交えて解説します。
■ 「頭と尻尾」とは何を意味しているのか?
「頭」とは相場の天井(=高値の限界)を、
「尻尾」とは大底(=安値の限界)を意味します。
つまりこの格言は、
「天井で売って、大底で買うことなんて誰にもできない」
「全部の値幅を取ろうとせず、真ん中のおいしい部分だけを取れ」
という戒めです。
投資初心者ほど「あともう少し上がる」「もう少し下がるはず」と思い、
結果的に利益を逃したり、含み益が含み損に変わったりします。
■ FXでの具体例:ユーロ円を例に考えてみよう
たとえば、ユーロ円が150円から170円まで上昇したとします。
チャートは上昇トレンド。ニュースも「円安継続」と騒がれています。
多くの人は「もう少し上がるかも」と思ってホールドを続けますが、
実際には170円が天井となり、反落して160円まで下がってしまうケースもよくあります。
このとき、「頭と尻尾はくれてやれ」という考え方を持っていれば、
165円あたりで利益確定できていたかもしれません。
つまり、
「頂点の5円分(頭)」と「底値の5円分(尻尾)」は市場にくれてやり、
真ん中の10円を確実に取る。
それが長期的に勝ち続ける投資家の姿勢です。
■ なぜ「欲を出す」と負けるのか?
相場で最も恐ろしいのは、「もっと儲けたい」という心理です。
チャートを見続けていると、
「次の天井は自分だけはわかる」と錯覚してしまいます。
しかし、相場の転換点を完全に見極めることは不可能です。
どんなプロトレーダーでも、全ての値幅を取ることはできません。
結果的に、
- 高値掴みをして損切り
- 利益を伸ばしすぎて含み損に転落
- 損切りを遅らせて資金が吹き飛ぶ
といった負のループに陥ります。
■ プロ投資家も実践する「真ん中だけ狙う」戦略
ウォーレン・バフェットも、「最安値を狙う必要はない」と語っています。
プロのトレーダーほど、「勝率よりも再現性」を重視します。
一度の大当たりよりも、
何十回も小さく勝てるトレードを積み上げる方が結果的に資産が増えるのです。
「頭と尻尾はくれてやれ」は、まさにこの精神そのもの。
どこで買い、どこで売るかを完璧に予測するのではなく、
“自分が取れる範囲”を見極める冷静さこそが、投資の本質です。
■ まとめ:相場の「全部」を狙う人ほど、最後に負ける
投資は「取引回数」よりも「心の安定」が結果を左右します。
天井も底も欲張らず、真ん中の波を丁寧に取ること。
それが、相場の荒波を生き残る最も確実な方法です。
相場のすべてを取りに行く者は、
相場のすべてを失う。
「頭と尻尾はくれてやれ」
──この言葉を胸に、次のトレードでは少しだけ欲を抑えてみてください。
それだけで結果は変わり始めます。